●少し、日常のことを
仕事の事を書くことが多いのですが。
今回は、長年の仕事の相棒のオーディオのお話を書きたいと思います。
仕事場には、四角くて古いオーディオが突き当たりの壁際に居ます。
数十年前にSONYが、通販サイトのみで販売していた「Celebrity」というシリーズの一台で、CDプレーヤーとラジオチューナーの付いたコンパクトなオーディオです。
オーディオ好きだった父が、かつて購入したセレブリティ。
SONYなのに、そのロゴは入っておらず、シンプルで四角いボディには、贅沢にもマホガニーが使われていたり、無駄な装飾の無い姿は、今見ても古さを感じさせません。
それもそのはず、デザインをしたのは、ジウジアーロという、車好きなら「きゃっ!」と言うてしまうポルシェなどのデザインを手掛けたデザイナーさんの手によるものでした(友人から教わる)。
15、6年ほど前になりますが、実家の隅っこに置かれていた、このセレブリティ君を拾い上げ、作業場の友にしました。
私が拾い上げた時点で、既に10年ほどは経っていたかと思われ、少ししたら、CDは読み込めない状況となりました。
しかし、CDが聴けなくなったとはいえ、このヒトの価値は下がりませんでした。何が凄いって、スピーカーの音が、たまらなく良いのです。
その当時のSONYの粋が詰まっているかの様な良い音なのです。
勿論、アンプとスピーカーのシステムに比べれば、物足りないところは有るのかもしれません。ですが、このコンパクトで四角い箱から出る低音は絶品なのです。なので、この十数年間は、外部音源からのスピーカーとしての役割を果たしてくれていました。
ところが、やはり劣化は進み、この2年間ほどは、スピーカーの音割れが酷く、突然、音が聴こえてこなくなったりで、作業中に音楽を流しつつも、何となくテンションが下がってしまっておりました。
嗚呼、もう寿命なのかなぁと呟きつつも、このデザインが好きだったのと、長年の相棒とは、別れがたくて、ずっと手元に置いておりました。
ある時、ふと思いついて、「セレブリティ 修理」と検索したところ、ある工房のサイトがヒット。「なおるのかー!」と大興奮。
今年に入って直ぐに、そちらの工房にセレブリティを託したところ、全て分解して下さり、細かな部分までチェックをして下さった上で、修理を施して下さいました。そして、全てのメンテナンスを終えて、ピカピカに磨き込まれた、セレブリティくんが、工房に戻ってきたのです。
見た目は、新品。
CDが聴ける。
ラジオも聴ける。
高音も低音も素晴らしい。
もう、びっくりです。
傾いた古い工房の床が、低音の音を吸って震えております(危ない)。
子どもの頃から、音楽を奏でる才能は一切無い私ですが、音楽を聴く事は、人一倍好きなので、嬉しくて、工房では、ひとりコンサート状態です。
古い機材がなおせるという事は、ミシンなどでもある事ですから、勿論、分かっていたのですが。愛着のある大事なモノが直って、また長く付き合えるという事が、こんなにも嬉しい事かと思いました。
直して下さった職人さんの心意気が伝わってきて、本当に有り難いなあと感じた出来事でした。
私自身が作るヤズドの子どもたちは、極力、丈夫でタフな作りにはしています。ですが、日々の相棒としてご活用下さったり、長年ご愛用頂く過程において、色んな箇所に傷み出たり、ファスナーや金具が壊れたりしてくる事は避けられません。
愛着を持ってお使い頂いている子たちですから、出来るだけ長くこの先にもお使い頂ける様に、パーツを取り替えたり、革や生地でパッチワークを施したりしながら、また気持ち良く使って頂ける様に、お直しをさせて頂いております。
全体を解体して修理をさせて頂く事がほとんどなので、お時間が掛かってしまうのですが、その時に出来る最善策で、修理をさせて頂きます。
お直しが必要になった時には、どうぞ遠慮無く、お伝え下さい。
長いお話で失礼しました。
自分自身が、古いオーディオを直して頂いて感じた嬉しさを私の商品を持って下さってるお客さまにも感じて貰える様にしたいと思った今日この頃です。
では、仕事に戻ります。
セレブリティの修理をして下さる工房「asakaze」さんのHP → (Click!)
帰宅したセレブリティ。新品同様。死ぬまで使えると良いなぁ。
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